●[インターネットのココロ]
カメラ付き携帯電話で、書籍などの欲しい部分(情報)だけを撮影して持ち去るのが「デジタル万引き」なのだそうです。立ち読みしながら使える情報だけをメモしてしまうようなものですが、最近は高解像度のカメラ付携帯のおかげで、気軽に(本や雑誌は買わずに)欲しいページだけを撮影することができるわけです。
この行為が「万引き」と定義できるかどうかは難しいですが、本来お金を払わなければならないことを無断で失敬してしまうのですから、マナー違反、モラル欠如は確かでしょう。
08.デジタル万引きと海賊版の思い出
近ごろは雑誌のみではなく、ムービー撮影機能を使って映画館で映画そのものを「録画」して家で楽しんだりする例も出てきているとか。今は大容量メモリーカードなどのオプションも充実しているので、かなりの長時間録画も可能なのです。
今ほどレンタルビデオが安くなかった時代、海賊版ビデオ、というものがありました。アメリカマフィアなどが作っている違法ビデオで、映画館にビデオ機材を持ち込んで映画を撮影、ダビングしてショップに流すのです。画質は悪いですが、公開されたばかりの最新作が自宅で気軽に観れるわけです。
日本とアメリカでは映画の公開時期に差が出ますが、海賊版はアメリカで公開されるとすぐに各国版が作られますから、私も若いころ、神田神保町の専門店でそういうビデオを借りまくったことがあります。「ターミネーター」などは日本公開より半年以上早く観ていますし、「死霊のはらわた」は1年以上も早く、「スプラッター表現が過激すぎで日本公開は無理だろう」などと語り合っていたものです。ちゃんと日本語字幕も入っていて、直訳でしかない翻訳ながらも言語に忠実なので、実際に劇場公開されたものよりも、微妙なニュアンスが分かりやすかったりします。

問題になっている「デジタル万引き」は、マフィアのように営利行為ではないのですが、やっていることはまったく同じです。
地図なら目的の場所の部分だけ欲しい、作りたい料理のレシピだけ欲しい、という気持ちは分かります。けれど、そもそも立ち読みだって本来正しい行為ではないわけで、常識で考えても、有料で売られているものをお金を払わずにコピーしてしまうのが違法だろうとということは、誰だってわかるでしょう。
簡単にできることだから違法じゃないだろう、というのはトンデモないことです。

本当にお金がなくて、でもどうしても、その情報が欲しいなら、素直にお店の人に頼んでみたらどうですか?。事情を分かってもらえれば、許してくれるかもしれません。そういう勇気やコミュニケーションをしようとせずに、黙って持ち去ろうとする行為は卑怯です。
デジタル時代、特にインターネットなどの仮想世界では、現実では決してしないようなズルをしてしまう人が大勢いますが、そういう世界だからこそ、個々のモラルが問われます。ちょっとした違反をしてしまったり、間違えたり、申し訳ないことをしたりすることは誰にもありますが、ズルくなってはいけない、と思うのです。
「デジタル万引き」は、行為そのものより、その「ズルさ」が嫌ですね。