●[インターネットのココロ]
インターネットを活用するには、パソコン技能以上に「健康な心」が必要です。そろそろ、本連載のタイトルそのもの、心の問題に踏み込んでみましょう。
22.インターネットの光と影〜影〜
一人で死ぬのは怖いし寂しいから、一緒に死にましょう。
そんな呼びかけで集まった、見ず知らず同士が集団自殺をしてしまう「ネット自殺」が社会問題になっています。2002年頃から目立ち始め、一昨年は三十五人、昨年は五十五人、今年は4月の時点で早くも五十九人が亡くなっているそうです。

現実の世界では、知らない人がいきなり「死にたいんですが?」と声をかけることは、まずあり得ないでしょう。けれど、インターネットでは、そういうことが起こり得る。
「死」を語る掲示板は無数にあります。
なぜ、そんな掲示板が野放しになっているのか、とお怒りの方もおられるかもしれませんが、多くの場合、そうした掲示板は必ずしも自殺を助長する目的ではなく、心の中のものを吐き出すための場所とされています。
世の中に悲観して「死にたい」という気持ちでいっぱいの人に、ただ止めろと言っても仕方がない。まずは気持ちを吐き出させて落ち着かせるべきだ、というわけです。もっとも、意図はどうあれ、自殺を考える人同士が出会いやすいわけで危険性は指摘され続けていますが、禁止と言い切ることもできずにいる、というのが現状のようです。

カウンセラーを相手にするのではなく、心に傷を負った者同士が、互いに匿名なのをいいことに、負のイメージを語りあう。本当に死にたかったわけではなくとも、だんだんと「死への憧れ」のようなものが芽生えてくるし、やがて集団催眠にかかったように、それが正しいことのように思えてくる。尻込みする者がいても、すでにそこは「そういうコミュニティ」なのだから、反論すると仲間外れにされるのが怖い。
なぜなら、死にたいとまで思い詰めている人には、そこが「最後の居場所」なのだから。
ネット自殺の背景には、そんなネット特有の部分があるわけです。
なお、自殺幇助的なホームページも実際に存在し、こちらは完全に違法ですが、ホームページは誰でも作れてしまうので、チェック機関とのイタチゴッコのような状態になっています。

ホームページ、電子掲示板、ブログ。様々な考え、意見に接することが出来るインターネットは、良くも悪くも、心に作用します。心が弱っているときには、知らず知らずに「負のコミュニティ」に魅せられてしまうこともあるかもしれません。
インターネットを正しく使うには、パソコン知識以前に「心」が必要なのです。