●[インターネットのココロ]
前回は「影」な話でしたから、今度はインターネットの素晴らしさを、私自身の体験でお話ししたいと思います。命を救う、そんな力があるのもインターネットなのです。
23.インターネットの光と影〜光〜
まだ今ほどにインターネットが一般的ではなかった十年前。一歳の娘が突然の発作で倒れました。近郊の病院に緊急入院したものの、約1時間おきに襲ってくる発作は止まらず、発作中は呼吸ができません。幸いにして数十秒で止まるものの、いつ止まらない発作が襲うかわかりません。数分間の呼吸停止でも、脳には重大な障害を引き起こします。そして、もし、それ以上のときは・・。
幼い我が子に、何本も刺された太い点滴の針。あんなによく笑い元気だった娘が、激しい発作に消耗してぐったりとしている。それでも、容赦なく訪れる毎時間の発作。身を引き裂かれるような思いで、それでも、見ていることしかできない。

原因が特定できない・・・。担当医の言葉はいつも一緒でしたが、私にはどうしても、それが腑に落ちませんでした。本当に検査は万全なのか、世の中に、娘の症状について何らかの知識のある医者は本当にいないのか。
私はインターネットで調べ始めました。関係がありそうな情報を片っ端から読み、担当医と話しあいました。けれど、所詮は素人です。担当医の言い分をひっくり返すほどの根拠は示せない。
私は、医師のホームページを見つけては、ワラをも掴む思いで「どうか娘を助けてください」と、症状を書いたメールを送りました。北海道から沖縄まで、数百の病院へ、です。たった一言でもいい、誰か、助けて・・。
すると、どうでしょう。
メールを送ったほとんどのお医者様がお返事をくださいました。中には詳しく対処法を書いてくださった方もいらして、多くのメールに共通した検査法が書かれていました。その検査を、娘は受けていません。
担当医に、全国から寄せられた電子メールの束を突きつけて問いただしたところ、その検査が必要であることを担当医はやっと認めました。知っていながらも、自分の勤務する病院にその設備がないため、必要な治療を施していなかったのです。すぐに他の病院を紹介させ、適切な検査と治療を受けることにしました。

あれから十年。
娘は毎日、元気な笑顔を振りまいてくれます。運動も、勉強も、遊びも、まったく問題ありません。念のために今でも通院していますが、発作はもう何年も起こっていません。
あのとき、全国のお医者様がメールをくださらなかったら?。そもそも、この世にインターネットがなければ、全国の専門医に呼びかけることなど、できなかったでしょう。インターネットには人の命さえ救う力がある−−−!。

私は当時からホームページ制作を生業にしていましたが、この出来事以来、よいホームページを作ることが自分の恩返しだと考えるようになりました。
見ず知らずの私に手を差し伸べてくれる人々が、インターネットには大勢いらっしゃいます。使いやすく、見やすく、何より、想いの伝わるホームページが増えることで、より多くの人が、私のように救われるかもしれません。
インターネットは善意のネットワークです。
あのとき、電子メールをくださったお医者様方のように、心あるインターネットユーザーが一人でも増えること、それを願ってやみません。