●[インターネットのココロ]
インターネットでも現実でも、身勝手はいけません。でも当人にはそんなつもりはないのでしょう。身勝手になってしまうのは、想像力不足が多いからです。
40.想像力を鍛えよう
他人を思いやる心というのは「他人の立場になって考える」ことができるということです。つまり、想像力。現代人は、この想像力が弱くなっているように思います。
私は子供の頃、学年誌に掲載されていたウルトラマンの写真や自分で描いた絵を切り抜いて、人形遊びをしていました。扇風機が怪獣。コタツの中は異次元空間。押し入れは秘密基地。多少はオモチャも買ってもらっていましたが、足りない分は想像で補って遊んでいたわけです。
そもそも昔のオモチャは、テレビのヒーローとはちょっと違うんですね。オモチャらしいオモチャになっていてリアルではないし、テレビと同じ動きができるわけではない。想像しなきゃ「ごっこ遊び」ができなかったんです。三十歳以上の方なら、インベーダーゲームも覚えているでしょうが、アレも映像的にはとてもインベーダーには見えないものでした。でも、心の中では凶悪な侵略者。想像で闘っていましたね。
それにビデオがなかった。再放送は多かったけれど、基本的には一期一会。たった一度観たシーンを何度も心の中で思い返していました。大人になって、昔のテレビマンガ(当時はそういう言い方でしたね)を観直したら「あれ?こんなだったっけ?」ということが多いだろうと思います。「オレのヒーローはこうだった」と、心の中で美化されているんですね。
そういうことを繰り返して、私たちは想像力を身に付けていったはずです。
今の子供も、ごっこ遊びはしますが、オモチャの質が上がって「ごっこ」では済まないくらいになっています。本当に洗濯できる洗濯機なんて、もうオモチャとは呼べないシロモノです。ゲームも現実以上にリアル。そしてビデオにDVD。いくらでも、しかも観たいシーンだけを観れる。何でもあって、何でもいつでも手に入る。想像で補わなくても楽しめてしまうし、生活できてしまう。
想像しないということは、疑問を持たないことにもつながります。与えられたものをただ受け取る。マニュアル通りに遊ぶ、使うだけで工夫できない。幼少時からそういうことだけを繰り返していたら、共感する心なんか育つわけがありません。身勝手な事件が後を絶たないのは、想像力が失われているからだと思うのです。
私はマンガを描いていますが、マンガは一人で監督も役者もこなさなければなりません。描くときは心の中で、悪役の立場になったり、ヒーローになったりします。つまり「他人の立場になる」ことを日々繰り返しているわけです。これが、マンガ以外の仕事でも大いに役立っています。お客の立場、経営者の立場、従業員の立場、いろんなことを考えられるから、事前に手を打ったり配慮したりできる。一人で生きているのではない以上、他人の気持ちを察する能力は、必要不可欠なのです。
学校の先生、図工の時間にマンガを描かせてみてはいかがです?。画力ではなく、想像力を高めるために、ね(私も小学校や公民館などでの漫画講師は何度か引き受けています)。