●[広告漫画家のつぶやき]
10.収益源=印税は、しょせん「たら・れば」
さて、そろそろ、後回しにしていた印税の話をしましょう。
ボクが印税の話を後回しにしていたのは、印税は、一般企業で言うところの出来高払い、歩合給のようなモノだと思っているからです。
売れなかったら、入らないお金ですもの。
しょせんは「たら・れば」でしょ。


そもそも、印税って、そんなに儲かるんでしょうか?
ミリオンなどの大ヒット作家なら、儲かってアタリマエだけど、それ以外の大多数の漫画家(1人の、そこそこやっていける漫画家の影には、売れずにいる漫画家や予備軍レベルが大量にいるものです)の場合、どうなのでしょう?

400円の単行本が出たとします。昔は初版2〜3万部も珍しくなかったのですが、今は1〜2万部がいいトコでしょうから、中をとって15000部として考えてみましょう。印税率はマンガの場合10%がフツーです。10%って割といい率なんですよ?
さらに、マンガの印税は音楽CDなどと違って、売れた数ではなく印刷部数に応じて支払われます。そこはありがたい。

となると、
400円×10%=40円×15000=600,000
というわけで、60万円の印税がもらえることになります。

普通に連載が続いていたとしたら、年間3〜4册くらいづつ単行本が出ることになりますから、240万円くらいの収入になりますね。
原稿料は「アシ代でなくなってしまう」のだから、これが漫画家の収入そのもの。

240万円・・・・。
フツーの平サラリーマン以下か・・・。
結婚して子供もいて・・・という生活には、足りないよね。
毎日、寝る間もなく、休日も返上して働いて、年収240万?

もっとも実際には、1つの連載でこんなコトはあり得ないでしょう。雑誌連載は厳しいですから、人気がなければ、すぐに打ち切りになるからです。年間3〜4册づつ単行本が出せる作家なら「そこそこ人気がある」はずだから増刷もかかって、この数倍は見込めると思います。
だから、初版のみの年間3〜4册というのは、細々とした連載や読みきりを描き続けて、単行本にまとめられるくらいになったら出してもらうという感じで、ソレが年数回ある、といった状態だろうと思います。

だけど、人気が上がらなくて単行本1〜2巻で終わってしまう連載だって多いわけです。ボクの場合なんか、単行本1巻分になる前に「雑誌自体が休刊してしまった」から、印税とは縁がないままになってしまったし(苦笑)。
つまり、連載はもらったけど人気はイマイチ、10週か20週で打ち切ることになっちゃった・・・となれば、2〜5カ月はバイトなんか不可能なハードワークで、しかも実質無収入(経費のみ)で働いて、単行本印税60万円もしくは120万円だけが手元に残る・・・ということになりますね。
いや、残らない。そんなお金、借金の利息分にしかならないでしょうから。
これが、業界で言われる「連載貧乏」なわけです。

もっとヒドイ場合だと、単行本そのものが出ない。ボクがソレだった。
ボクは短い期間で、ボクの人気度とは関係なく連載継続ができない状態(雑誌自体が消えた)になってしまったし、アシスタントも友人1名にホンのちょっとの謝礼程度で済んでいたから、あまりイタイことにならずに済んだのですけど、とにかく単行本が出ないってコトは経費のみで収入ゼロってことですからねぇ。
出版社にしてみれば、売れないモノは出さないっていうアタリマエの考えなんだろうけど「原稿料はアシ代でなくなってしまう」ことは承知のはず。それなのに出さない、印税は用意しないっていうのは、ちょっとヒドイと思います(ていうか、原稿料が安すぎるんだよ、やっぱり。印税を当てにしなくてもギリギリやっていけるくらいの原稿料じゃないとダメだって)。

とにかく、売れっ子じゃない漫画家の現実は、そんなモン。
売れる、売れないは運次第、宝くじ同然・・・。
漫画家を生涯貫く職業として捉えた場合、あまりに非現実的に思えます。

もう一回、言いますけど、
宝くじに当たることを前提とした人生設計って、むちゃくちゃでしょ?