●[自分の力でやった人たち]
06.広告出す前にメールで完売したエステサロン
広告はお客のいる場所や目に付く場所に出さないと意味がない。
エステサロンや美容室のお客はどこにいるのか。
私たちがエステサロン・メールブルーのホームページ第二期リニューアルを手がけるために考えたことは、それだった。
メールブルーホームページは、2000年冬に担当した仕事で、数ヶ月単位で小さなリニューアルを繰り返しつつ、1年が過ぎていた。反響はまずまずで、スタッフによるニュースの更新・追加や、電子掲示板によるお客様とのコミュニケーションも、それなりの効果を生んでいた。
ホームページで、見込み客や冷やかし客を、実際のお客に引き上げるフォローを狙っていたメールブルーでは、この状況にそれなりの満足を得ていた。

メールブルーホームページのリニューアルは、どちらかと言えば、業者の都合で始まった感がある。
2001年9月、私が当時所属していた制作会社では、携帯電話向けのホームページ作成ASP(アプリケーション・サービス・プロバイダ)事業を立ち上げた。その試験的な意味で、メールブルーに提案したのだった。

メールブルーは茨城県つくば市の研究学園都市内にある。高収入の研究者が多く住む地域のため、インターネットの普及率も高く、それゆえホームページの効果もあったと推察できたが、私たちはまだ認知度は低いと感じていた。
エステサロンや美容室の客は女性が大半だが、一部の例外を除いて、彼女たちはインターネットをあまり活用していない。統計的に見ても、テレビゲームを始めとするバーチャルな物事に熱中するのは、男性がほとんどなのだ。
一方、携帯電話はどうか。普及比率は男女を問わないが、メル友とのメール交換など、そのネット活用においては、学生と女性が圧倒的に進んでいる。1件1円程度で送受信できる携帯メールは、家計を預かる女性の強い味方なのだ。

女性客は携帯ネットにいる。
これを取り込むことを狙って、メールブルーのリニューアルは進められた。
ただし、コストはかけられない。個人経営規模の中小企業にとって、確定していない見込みに対して大きな予算を投じることはできないのだ。
私たちが用意した携帯電話向けASPは月額1500円と設定されていた。
これを使い、携帯端末向けの情報サービスを展開させ、成功させる。
メールブルー自身より、私たちの事業の試金石のつもりで臨んだ。

メールブルーでは来店したお客様に、お店のご案内をしたい、という理由で携帯アドレスを教えてくれるように頼み、集めたアドレスは年代別にシステムに登録された。
店頭で会えない見込み客向けに、携帯電話上からメールアドレスを登録できる窓口画面も用意した。
また、携帯向けのサービスがあることを認知してもらわなければならないため、携帯ホームページの画面をメインのホームページ上からも閲覧できるように仕掛けた。
デザイン的にもメインホームページのイメージを損なわないように、表示させる。
こうすることで携帯向けのニュースやお知らせを、PC向けのメインページでも活用できる。
こうした管理負担を少なくする工夫は、ホームページを続けていくうえで絶対に必要なことだ。
さらにタウン誌等を使って、携帯電話でのサービスを開始することを広報した。

こうして、携帯ホームページを組み込んだメールブルーホームページが再スタートしたのは、2001年10月5日である。
閲覧者がやってくるのを待ち受けるメインホームページに対して、メールマガジンは攻めである。商品やサービスの情報を相手先に直接送り、ホームページへと誘導する。
数百のメールアドレスが集まり、これらに積極的にメール広報を行った。携帯電話向けのメールでは長い文章は書けない。読みづらい、ということもあるが、機種によっては表示できる字数に制限があるため、全文が届かないからだ。

同年11月、新たなエステ商品を仕入れ、これをネット販売した。
メールブルーではこれまでの経験から、オンラインだけでの販売では捌ききれない、と判断し、再びタウン誌に広告を出した。ホームページ上では、タウン誌の広告掲載よりも数日早く同商品を掲載し、携帯メールにもタウン誌より早く連絡した。
その結果、タウン誌が発売されたときには、すでに商品は完売されていたのだ。
購入者の大半はメール広報によるものである。
やはり携帯ネットに客はいたのだ。

私たちは、その後メールブルーの他にも、多くの携帯サイトを手がけることになった。
家でパソコンと向かい合う、今までのホームページと異なり、どこへでも情報を届けてくれる携帯サイトには、また別の可能性があるようである。