●[自分の力でやった人たち]
09.納豆のように粘り強く土地を探す不動産会社
インターネットではアイディア1つで大きな利益を得るチャンスがある、と言われている。
たった1つ、人と違うことを思いついただけで、数億もの利益を手にする。
もっとも、そのアイディアも出尽した感があり、最近ではそういったビッグチャンスは稀なケースといっていい。
それでも、ちょっとした工夫がネットユーザの目を引くことは十分にある。

さくら住宅販売株式会社のホームページは、ごく平均的な住宅建築会社の案内サイトとしてスタートした。
会社案内、業務案内、最新ニュース、と基本的なコンテンツ構成で、他社に比べて目新しい技術があるわけでも、価格が極端に安いわけでもない。
が、このサイトには、1つだけ、個性的なサービスがある。
それが<土地探しコーナー>だ。

土地を探して欲しいユーザは、同社サイト上から、場所、価格、面積など、探したい土地の情報を入力する。その情報を元に、さくら住宅販売では、要望にあった物件を探しだすのだ。
むろん、必ず見つかる、というわけにはいかないし、いつまでに、と期限を指定することもできないが、それでも、見つかるまで、諦めずに探す、というのがこのサービスの魅力だ。
キャッチコピーは<茨城納豆のようにねばり強く>である。

これが意外にウケた。
同種のサービスは、インターネット上に、それこそ山ほどあるのだが、その多くは、ネットワーク上のマッチングシステムであり、実際に探しているわけではない。
さくら住宅は、本当に探すのだ。
しかも土地とは、その地域・地方の事である。地域のことは、地域の会社が強い。
賢いネットユーザが地方の不動産会社にも興味を持つのは、十分にあり得ることなのだ。

ここで、大抵は、客になるかどうかわからないのに、そんな労力は割けない、と考えるだろう。
ところが、実際に土地が見つかれば、成約も、その後の住宅建設も、高い確率で受注できるのだという。
面倒で厄介な仕事どころか、やみくもに営業するより、遥かに効率のよい方法だったのだ。

豊富な物件数を自由に探せる不動産探しサイトは多いが、これを個人や中小企業で実行するのは無謀だ。客が期待を感じるだけの、豊富な物件数を確保し続けなければならないし、その膨大な物件の動きを常に把握しなければならない。これは、よほどの大手か、資金力のある企業でないと、必要なシステムの開発・運用・管理ができまい。

さくら住宅ホームページにかかっている費用は、総額20万円にも満たない。ニュースやメール機能、独自ドメインサーバのレンタル代など、月額単位の費用が別途かかっているが、それも数千円である。
これで、住宅の受注が取れている。
費用対効果、という観点で考えれば、大成功といっていいだろう。

同社サイトは2001年春に一部リニューアルし、その際に<土地探しコーナー>を全面に押しだすデザインに変更した。