●[自分の力でやった人たち]
10.毎日毎月、日記のような市議会議員サイト
毎日の更新。
ホームページでは必須の事で、これを滞らせると、ホームページは死ぬ。
だが、実際に続けていくのは、やった者にしか分からない苦労がある。
簡単な更新システムや、便利な作成エディタソフトがあっても、そういう道具や技術ではない、もっと別なところに、本当の更新の苦労はある。

私自身、1997年から2000年まで、仕事とは別に、自分のホームページを運営していた。
実は、自社ホームページを除いて、自分のサイトを(継続して)運営した経験を持つ作成業者は意外に少ない。私がやっていたのは、趣味でコレクションしているオモチャのホームページだ。
個人的な趣味のサイトながらも、毎月平均3000件程度のアクセスがあり、一時はテレビの取材(フジテレビとテレビ東京で紹介され、テレビ東京は後に番組出演依頼もあった)さえあるほどに、認知度が上がった。
当時、私は毎週末に更新作業をしており、その都度、約20画面を新規作成して追加し、さらに既存のページをいくつか書き換えていた。
オモチャの写真はデジカメで撮影して掲載する。毎週、30カットほど撮影するので、簡易の撮影スタジオも造った。これに、自分でコメントもつける。

これが大変なのだ。ホームページを育てていくのは、それなりに楽しいのだが、やがて毎週必ず、というノルマになってくる。これが重い。
さらにリンクの依頼が舞い込んだり、問合せや要望にも対応しなければならない。
そのプレッシャー。
一方的に作るだけでなく、コミュニケーションを続けていかなければならない。
注目度が上がれば上がるほど、手も抜けない。気が休まらなくなる。
私は、ニュース更新システムなどの便利な機能は使っていなかったが、仮にあったとしても、いつかは負担に負けただろう。
結局、2000年春を以て、個人サイトは閉鎖した。

私の個人サイトは、今もって再開していないが、この経験は、ホームページのプランニング、コンサルティングにおいて、多いに役立った。
売れているから、アクセスが多いから。
そういった実績があっても、苦痛は苦痛なのだ。
私のような専門業者でさえ、面倒だった。中小企業のWEB管理担当者にとっては、本人にしか分からない苦労があるに違いない。
だから、更新は必要だが、過度のノルマにならないよう、距離を持つべきだ。
予算が許すなら、IT業者に委ねてもいいだろう。
最新のニュースなど、第三者を経由していては支障があることだけを、自分で管理する。
自分がやれる範囲のことを精一杯やるだけで、いい。
そういう体制でも、続けていけるように企画し、構成する工夫。
お金には換算しにくい部分だ。
だが、それが見た目のデザインや斬新なアイディア以上に、大切なものなのだ。

そんな中、毎日、といってもいいほどのペースで、膨大な記事更新を2年近く続けている方がいる。
千葉県柏市の市議会議員<西富啓一>氏である。
同氏のホームページ<西富啓一の思いっきり発言>では、市議会のレポートから、国政、教育問題など、様々なことについて、常に新しい意見を書き続けている。
2001年夏からは、携帯用のサイトを追加し、そちらにも別途記事を書き込むようになった。

WEBデザインやシステム管理、といった専門分野は、私たちが担当しており、ニュース用の掲示板サービスを使っているため、HTML作成などの手間はほとんどないが、それでも、これは驚くべき精力といっていい。
まして、西富氏は、今年65歳。
本人自身が書いていることを信じていない人もいるかも知れない。
が、まぎれもなく本人が書いているのだ。しかも、管理や処理も自分でやる。
ご本人は、決してパソコンの専門家ではない。ワープロを使える、という程度のスキルだが、今や自身のスケジュール管理まで、ASPで処理するほどのIT通である。
この努力は、少しづつ、閲覧者の耳に響いてきている、という。
毎週、西富氏のサイトを定期購読している読者も、いる。

継続は力なり。だが継続するにも力はいる。
私たち制作・企画業者は、実際に運営する人たちの気持ちや、苦労を肌で感じなければいけないのだ。