●[自分の力でやった人たち]
12.イメージ戦略と機能を融合させたゴルフ場
私たちの住んでいる、つくば市近郊にはゴルフ場が多い。霞ヶ浦、筑波山を中心とした自然も残っており、東京から60分以内という、便利な地域だからだろう。
ゴルフ場にも、それぞれ特長があり、ゴルファーたちは自分のプレイスタイルやコンペ内容に合わせてコースを選ぶ。

阿見ゴルフクラブは、どんなゴルフ場なのか。
私は、まずそれを考えた。

WEBサイトには様々な情報が盛り込まれるが、その中でも、私たち制作者の技量がはっきりと出るのは、仮想体験である。
念のために断っておくと、バーチャル3D空間を作って自由に歩けます、などというものは仮想体験だと思っていない。確かにソレも「仮想」だが、安易で稚拙、しかも通信速度上の難がある3Dなど、不便極まりない。私の意図するものは「体験」の方である。

人には想像力がある。
絵でも写真でも、文字でも、ある情報を得たとき、人は自分の経験に照らし合わせて想像する。
リアルに想像すればするほど、その行為に対する欲求は大きくなる。
ここで大事なのは、リアルは、人の頭の中にある、ということだ。例えば、近所の砂浜で撮影した「砂漠」など、小説のリアル感には遠く及ばない。無理やり押し付けたCG空間などは、かえってリアリティを損なうだけで、お金の無駄である。

資料として預かった阿見ゴルフクラブのパンフレットは、まさにそういう意図のもとに作られていた。全18ホールの風景が盛り込まれた、グラビア写真集のような大判パンフレット。

---OUTに笑い、INに泣く。まるで人生。---

WEBサイトのビジュアルは、このイメージ体験を優先させて考えた。
まず、その気にさせる。
ショックウェーブフラッシュを使ったムービーを採用することにした。
フェアウェイの緑。広がる自然。インパクトの感触。爽快感。
そうした感覚をテンポよく閲覧者の脳裏に送り込むには、有効な手段だからだ。
ネット有識者の間では、無意味だとして否定されがち(私も同感)なオープニングムービーだが、ここでは絶対に欲しかった。必然性があればムービーは役に立つ。
表示時間は、これ以上でも、これ以下でもマズイ、というギリギリの秒数にしたつもりだ。

※実際に制作したのは東京の制作会社で、私はシナリオ形式で、大まかなイメージを伝えて発注した。秒数がそのままコストとして計算されるので、全体の秒数やタイミングは気にして構成した。

ムービー終了後に表示されるホーム画面はコース写真とコース図をダイナミックにあしらったもので、ムービーからの流れを汲んだ作りにした。
想像に、余韻を残したいからだ。
サイト自体は、主にサービス案内とニュースを中心とした構成である。
もちろん、コース写真もあるが、ムービーで感じさせた想像を持続させるために用意したようなもので、あまり数は多くない。
それよりも、イベント案内、毎日のコースコンディションの掲載、クラブハウスの月替わりサービスなど、リアルな情報を多くした。
すでに、イメージは送り込んであるのだ。ゴルフ好きならばプレイしたい、という欲求(衝動)はすでに起きている。ならば、あとは実際の行動を起こさせるための「ネタ(理由)」があればいい。
自分の予定と営業日は合うか。
明日のコース状態は。
料金は。
WEBサイトを見た段階から、すでにサービスは始まっているのだ。

こうした部分を阿見ゴルフクラブでは、毎日のように更新している。私たちが用意した更新システムは使っているが、それでも続けていくのは、阿見ゴルフスタッフ自身の力なのだ。
この更新が「行動」を決定する最後の一押しをする。

阿見ゴルフクラブでは、社内スタッフのネット対応が整わず、開設後1年近く、オンライン予約ができなかった。にも関わらず、ホームページを見た客からのオーダーが数多く取れている。
(今ではオンライン予約が可能。携帯電話へのメール情報サービスも開始している)
見た人をコントロールして、ゴールに導く。
阿見ゴルフクラブの成功は、戦略と技術、そして努力が生んだものなのだ。