●[やりたくないユーザーたち]
07.ヤル気がある、と思い込む制作会社
私たちのようなWEB企画会社がホームページ制作を引き受ける場合、クライアントにはヤル気(ホームページを運営する意気込み)がある、との前提で考える。例え担当者にヤル気がなくとも、ある程度の資金を投資できる大手企業ならば、管理委託するなり専従担当者を雇うなり、それなりの状態を維持していけるだろう。

だが、資金にも労力(時間)にも、そして知識にも不安のある中小企業の場合は、まったく違う。
そもそも、サイト運営に対する意識からして違うのだ。

少し、中小と大手の体質について考えてみたい。
大企業は、身体が大きいからこそ、必要不可欠なものとして、情報伝達、業務分担などの整備が進んでいる。社内の異動もあるし、TQC活動などの教育も行われている。つまり変化に対応しやすい素地ができているのであり、IT化も進めやすい。大企業に勤める人々は、役職に関わらず「スペシャリスト」である。
これに対し、中小の場合は、この反対と言ってよく、ファミリー的で、競争原理があまり強くない。つまり向上心や切磋琢磨が起こりにくいのだ。そのため、現状維持の傾向が強く、実力主義の時代の流れにそぐわない。
また業務分担もあやふやである。中小の社員は「ゼネラリスト」なのだ。

この違いを十分に理解していないと、中小企業サイトを企画することはできないのだが、多くの制作会社は、そのことに気づいていない。

近年、コンサルティングの重要度が増してきているが、それでもWEB企画会社・制作会社は基本的に作ってナンボの世界である。
凝った作りや斬新な企画であればあるほど、売上げも大きい。だから、ほとんど例外なく独自のコンテンツ企画を盛り込んでくる。
ニュースを充実させよう、データベースで商品検索をつけよう、さらに受発注管理システムもあったほうがいい、アンケートとキャンペーンも定期展開しよう。
むろん、発注側でも、そういったアイディアを求めているし、実際、閲覧ユーザ側にとっても役に立つコンテンツになる可能性も高い。
ただし、扱えるならば、である。

中小企業では、パソコンも経理用の1台しかない、とか、ソフトウェアの使い方も分からない、といった例も多い。ワープロ打ちさえ大変な苦労で、日々の業務も山積みである。その上サイトの管理など、そうそう手が回るものではない。たった1つのニュースを更新するのでさえ、四苦八苦することもあるのだ。
そして、気づいたときには、ホームページはジャンクに成り果てている。
こうなると、最初はあった情熱も失われ、さらなる悪循環が始まる。

企画会社の多くは、中小企業を騙しているわけではない。
だが、企画会社が考えているほど、企業側は対応できない。
手に負えないのだ。
発注側である企業担当者はもちろん、企画会社も、この問題にもっと注意すべきだろう。
クライアントがOKしたのだから作ればよい、というのでは、企画とは言えまい。
せめて、クライアントの熟練度に応じて優先順位を決め、軌道に乗ったら次の拡張をする、という具合に提案していくべきだろう。
最初はパソコン1台と、最低限のホームページで始めれば、それでいい。

クライアントの<ヤル気>を過剰評価せず、サイト運営のバックボーンを見据えた提案をすべきなのだ。