●[やりたくないユーザーたち]
12.パソコンはただのハコ
パソコンに不慣れな人であればあるほど、パソコンに過大な期待をする。
パソコンは絵を描けない。
パソコンは文書を作れない。
パソコンはインターネットサイトを管理しない。
やるのはパソコンを使っている人なのだ。

そんな事は当たり前なのだが、どうも分かっていない人が多いようで、「パソコンで描くんだから安く出来るでしょ」などと未だに言われることがある。

1997年、茨城県某市の公式サイトを手がけたとき、市議会で取り沙汰されたことがあった。
ある議員曰く「ホームページはパソコンさえあれば誰でも作れる、と聞いている。そんなものに何百万もの税金を使うのは納得できない。」
この件はあまり大きな問題にはならず、仕事は順調に進めることができたが、この議員はパソコンを使ったことがないに違いない。

なるほど、議員の言う通り、ホームページを作るために必要な道具はパソコンだけでよい。HTMLが書けるなら、単なるテキストエディタで十分だから、専用ソフトさえ必要ない。
だが、それは道具の話だ。
この議員の意見はデザイナーやイラストレーター、カメラマンなどを否定している。
例えば会社のパンフレット。
質を問わないならば、手書きで作ってコピーで済ましてもできる。だが、より見やすく、使いやすく、美しく作るには、専門の知識と技術が必要になる。だからこそ、デザイン会社が存在するのだ。私たちは手間賃をいただいているわけではない。私たちクリエーターの価値は「創ること」にある。
絵を創るのはイラストレーターの感性と技術であって、パソコンの能力ではない。

1996年、ホームページ作成ソフトが発売されて間もない頃、ある同業者が言った。日本人なら誰でも知っている大手商社のWEBソリューション部門の課長である。
「こんなソフトが出回るようになったら、あなたも困るでしょ」
この会社は「手間賃」で仕事をしている会社だ。
私はそれを否定するわけではない。手間を省くためにアウトソーシングするのも正しいことで、そのためのサービスもあるべきだろう。
だが、優れたWEB作成ソフトが出てくれば、ますます能力の差で勝負が出来る。
私たちプロにとっては望むところではないか。
道具は何も生み出さない。

WEBサイトを運営する企業の皆さんも同じだ。
パソコンがメールチェックするのではなく、結局はあなた自身が読まなければ何にもならないのだ。