●[やりたくないユーザーたち]
18.トンデモIT営業マンの恐怖
最近はIT活用のレベルも高くなり、なんの実力のない制作会社では仕事にならないようになりつつある。
だが、そういう業者が駆逐されたわけではない。ネットで「ホームページ制作者」を探すと、いまでも「ナメてんのか!」と言いたくなるような制作者が山ほど見つかるし、一見しっかりしていそうな会社でも、実態はトンデモない、という事が多い。
制作者にも営業担当者にも、そういう「トンデモ人間」はいるが、ここでは、皆さんが直接会うことになる「トンデモ営業マン」をご紹介しよう。

●何を言っているか分からない
バブル期の大手広告代理店の企画書のようなことを今でも言っている。
「グローバルな視点でITソリューションをプランニングすることによって、貴社のビジネスをトータルにマネジメントいたします」とか。
結局、何を言っているのか、まったくわからない。流行の横文字を並べ立てているだけで、言っている本人だって分かっていないに違いない。理解していないから自分のコトバで話せない。だから、どこかで聞いてきた知識の受け売りだったり、美辞麗句を並べるだけだったりする。
この手の連中はちょっとツッコミを入れると、すぐにボロを出す。

どうしたって日本語にできない用語もあるが、私は可能なかぎり日本語で話すようにしている。
また、こうやって文章を書くのが好きなので、人の意見や本、ネットで得た知識も自分なりに整理し直してみる。
偉そうなコンサルティングのセンセイが言うことでも、(理屈はちゃんとしていても)現実としては納得できないことも多いからだ。


●業界のことがわからない
ほとんど勉強もしていない営業マンがどれほど多いかは、この業界で1年も働けば、すぐにわかる。忙しさに追われて自分では、ほとんどインターネットを見てもいないのに、客には「事情通」のような顔をする。ネット業界の現実も知らず、3年以上も遅れた知識で営業していたりするが、それでもやっていられるのは客の多くがそれ以上に無知だからだ。

私も何でも知っているわけではないし、多少情報に偏りがある場合もある。
だが、少なくとも自分の提供している内容については、同業者の料金表を毎月チェックしたり、もっと安いものがないか調べたりしている。


●インターネットがわからない
あまりにあまりなコトだが、本当に分かっていない。自分ではインターネットショッピングしたこともなく、掲示板やチャットも知識として知っているだけ。ホームページ運営の苦労など知るよしもなく、自社のホームページは何年も変化なし。

ウチでは本はアマゾンで、PC関連の機材もほとんどネットショップだ。
ちょっとした調べものもネットだし、妻はモーニング娘のファンサイトを運営している。
「矢口真理のインターネットラジオ」を聞きながら仕事したりチャットしたりしている。

●客の立場がわからない
「お客の立場で考えます」というのもセールス文句の基本パターンだ。このサイトにも書いてある。
問題は、「立場をわかっているか?」ということだ。
「お客様の目的に何が必要か」を考えるのは、どこでもやっていることで、そのためのプログラムやシステムを開発するのも、ほとんどの会社が対応している。優れた技術で、本当にイイモノを作れる会社も決して少なくない。
だが、それが「本当に役に立つか」は別の問題だ。
以前、私たちが扱っていた、あるグループウェアASPがある。本当によくできたASPで自分たちも普段から使っており、代金をいただくに値するモノだったと思うが、売れなかった。「ある目的のために最適なシステム」も、それを使いこなせなければダメなのだ。
今現在の業務フローとその実態、IT知識の習熟度、会社の体質や従業員の気持ち。
せっかくの新機能も「会社全体」に受け入れられなければ無駄である。
「お客の立場」を考えるなら、表面的な部分だけでなく、そのバックボーンまで全部考えなければ意味がない。

客自身でも分かっていないことが多いので、ウチでは専用の質問用紙で問題を聞きだす工夫をしている。

●何をすべきか分からない
勉強していない営業マンには「進行管理」という、もっとも大切な仕事が出来ない。
客先からどんな原稿を集めてくればいいか分からないし、制作担当者に正しく伝えることも出来ないから、仕事の足が長くなって、客も制作担当者も迷惑する。
それでいて、プライドばかり高かったりするから始末におえない。
ある営業は「客が望んでいるから」と非現実的なアイディアにこだわっていた。あまりに無茶なので客に直接聞いてみると、それは、その営業マンが言い出したことで、自分たちはお任せしただけだ、と言う。これでは仕事をかき回しているだけで、いるだけ邪魔だ。

私は直接客に会えるときはできるだけ、会うようにしている(メールでもいい)。代理店経由の仕事の時は、おかしな点は必ず聞くようにして、依頼内容をじっくり検討してから引き受けている。

●コストがわからない
勉強していないから、何をやったらいくらかかる、というアタリマエのことが分からない。むろん、細かい数字はちゃんと専任担当者に聞かないと分からないことが多いが、概算すらはじけないのだ。
こういう営業マンだと、「お客が50万位で・・」といっても、それに見合ったプランを考えられない。考えられないなら考えなきゃいいのだが、客にイイカッコしようと、できもしないのに概算見積をしゃべったりする。
例えばオラクルで50万アイテムのデータベースを作ったら、いくらなのかも分からずに「200万位です」などと言ったり、たかだか数時間で完了するような案件に「30万で一週間はかかります」などとトンチンカンなことを言ってしまう。

ウチの場合は、自分自身のことだからハッキリわかる。
即答できない案件の時は、必要な基本仕様を検討した上で、専門業者に見積を出してもらうようにしている。

・・・ホームページ制作やプログラム開発を依頼する側のお客様達は、こういう話を聞くと「まさか」と思われるかもしれないが、これは別に珍しいことではないのだ。
どこの会社がそうだった、という話までは(ココでは)明かせないが、発注先を選ぶときは、相手の話をよく聞いて、「本当に言っていることが自分たちのためになるのか」よく考えて欲しいと思う。