●[WEBクリエイターの2900日]
01.デザイナーという仕事
時々、新人のデザイナーや予備軍に「どうやったらプロになれますか?」といった質問をされることがある。一般的には「経験を積んで、いい刺激をいっぱい受けなさい」などと答えるところだろうけど、僕はこう答える。
「もの凄くイヤな目にあっても、毎日残業で帰れなくても、収入がマクドナルドのアルバイト以下でも、自分は絶対あきらめない、と思えるようなら、すでにプロだ」。
それがデザイナーの真実の姿だからだ。
マスメディアで紹介される有名デザイナーなんてホンの一部。もちろん、それを目指すのも励みになるけれど、ハンパな気持ちじゃたどり着けない。いいモノを作るためなら休日もいらん、というくらいの覚悟があって、初めて成功できる業界なのだ(もっとも、そういうデザイナーの心意気に乗じて、正当な賃金・報酬を支払わないような悪質な会社もあるが)。

最近はパソコンの性能アップに加えて優れたソフトウェアも増えた。
本来業界人だけのノウハウだった情報もインターネットで簡単に手に入る。
シロウトでも、プロ並のモノを作れるようになってきているのだ。
だが、それでも歴然とプロとシロウトの差はある。

プロには、「ビジネス」を考えた上でのこだわりがある。
責任感でもあり、誇りでもある。
デザイナーは自ら考え出したものに値段をつけている。出来上がるまで何のカタチもないから、それは自分という人間を売っているのと等しい。創るモノも、その料金も、すべて自分自身の値段なのだ。
だからこそプロは誇り高い。逃げ出さない、諦めない、妥協しない。
プロである以上、絶対に譲れない「レベル」というものがある。
私たちプロは、作った作品の実績で食べている、というところがある。作ったモノに値段が書いてあるわけではないから、料金がいくらだから、これでいいや、というワケにはいかない。
自らの作品として世の中に出す以上、恥ずかしくないレベルというものがあるのだ。本当に実力で食べているプロなら、そこには妥協しない。

「私を信じて仕事をください」。
初めて会った人に、実質そう言わなければならないクリエイターという人間たち。
この世で自分がナンバーワン、というくらいの誇りと自信がなければ、やっていけない職業なのだ。