●[WEBクリエイターの2900日]
22.冷夏のクリエイティブ
お盆休みの1週間、東京では26度を超える日がほとんどなかったという10年ぶりの冷夏。エアコンの販売が落ち込み、どこかの川では冷水で鮎が激減、釣り産業が大打撃だそうだ。8月ど真ん中の繁忙期のはずなのに、海の家では閑古鳥。一方、欧州では記録的な熱波で死者続出だという。地球はどこかおかしい・・・けど、それを知恵で乗り切るのが人間って生き物だ。嘆いていないでクリエイティブに考えてみたい。
なぜって、クリエイターは気候とだって戦わなければならないからだ。異常気象だから宣伝効果はゼロですが仕事はください、などとクライアントに言うわけにはいくまい。マイナス要因は本当にマイナスにしかならないのか。

鮎を釣り上げたら懸賞を出します!、過酷な冷たい水の中で生き抜いた生命力溢れる縁起モノの鮎!、果たしてあなたの元にも訪れるか?!
・・なんてのはどうだ?。
雨でも遊べる!ビニールハウスの海の家・登場!紫外線カットのシールドの下で磯遊びや砂の彫刻づくり(サッポロ雪祭りのチャンピオン作品展示中)!貴重な休みを無駄にしないのは○○海水浴場だけ!
・・・てのは?。
涼しい夏だから、ほどよく使って経済的!維持費が安く値段も安い今のうちにエアコンを買っておこう!暑くなってからでは出せない価格でサービス中!
・・という表現は?。

このアイディアがいいかどうかは別として、クリエイティブってのは知恵を絞るって事だ。ジョーシキに縛られないってことだ。雨だから海はダメ、鮎がいないイコール鮎釣りできない、と決めてかかることじゃない。ホエールウォッチングの醍醐味はもちろんクジラに出会うことだが、出会えない時でも楽しみ方はあるものだ。そして、そういう事から新サービスが生まれるのだ。レアな魚が釣れたら願いがかなう、なんて評判になれば鮎シーズン以外のウリになるかも知れないし、ビニールハウス海岸を作れたら、冬でも海のレジャーを提供できるかもしれない。

旧zektのコラムで書いたが、私は去年、台風の日にディズニーシーに行った。ドナルドの水上ショーがあったが、私が見たのは雨の日バージョンで晴天時には見れないものなのだそうだ。わざわざ雨の日を狙ってくるファンもいるそうで、レアなショーを見れた同行者たちは大喜びだった。
若いころに上野動物園に行ったとき、一番人気のパンダ小屋が休みで、客はみんな退屈そうだった。そこで、どこでも見れそうなアライグマの前で、コミカルな動きに合わせたマイクパフォーマンスをしてたら、後ろに人だかりが出来てしまって拍手までもらったことがある。「おお〜っと、洗いそうで洗わない!アライグマ魂がないのか!彼女が来たぞ!不潔なヒトって嫌い!そういって叱ってくれ!・・ってオマエも洗わね〜のか!!」(やめるにやめられなくなって、10分くらい喋っていた・・)

マイナス状況を楽しくする、ちょっとした工夫。アイディア。そもそも来客の多くは予定を変えにくいはずで、本当は何とかならないかと願っている。つまりは潜在的欲求ってヤツがある。欲求があるんだから、引っ張り込む手段はあるはずなのだ。

広告やWEBの仕事は、そういう部分を刺激してやることだと言っていい。一般中小クライアント中心の私の場合、強力なセールスポイントを持った題材に恵まれることの方が珍しい。売れないのがアタリマエ、それをひっくり返す「ネタ」をクライアントと一緒に考える。厳しい状況からアイディアを生み出し、イメージで補填しコピーで煽りパフォーマンスで演出して、ぶつける。(元ギャグ漫画家としては、そういう「ウケ狙い」の仕事こそが本領だしね。)
気温や天候は人間の都合でコントロールできないが、それを逆手に取ることはできる。アタリマエなんかクソくらえ。どんな状況もネタにする。そんな発想がクリエイティブってことだと思っている。