●[広告漫画家のつぶやき]
05.個人事業主なのに自立できていない漫画家たち(その2)
前回のつづき
さて、この問題の解決は、簡単ではないだろうけれど、可能性はあるんじゃないかな、とボクは思う。

例えば、最初は出版社で我慢しながらマンガ描いて、資金を貯めたら自費出版でやってく、みたいな。実際、売れっ子の漫画家さんならそれでも売れるだろうし、事業資金もあるでしょう?
マンガなんて、大きな工場や高い機材がなくても描けるんだから。
漫画家が、そこまで覚悟決めてやっていたら、出版社だって無茶は言いづらくなると思うし、それで出版社が変わっていくかもしれないし、そういう作家たちが集まってユニオン化したり、いっそ「漫画家直営の出版社」を立ち上げちゃうことだって、可能性としてはアリでしょ。
(さいとうたかを先生は、リイド社でそれを実現したよね。前例だってあるわけだ)

自費出版覚悟で飛び出した作家が、その後、良質な作品を世に出し続けていれば、連載オリちゃったりしたことも「ああ、出版社がダメだったんだ」って読者も、ちゃんと分かるし。自費出版じゃ、全国津々浦々のファンに作品を届けられないっていう問題はあるだろうけど、今はネット通販もできるし、消費者が望むなら、ショーバイでやってる出版社は「そのままでいいから売らせてください」っていうに決まってるでしょ。今の編集部が意地を張ったところで、株主が許さないよね。
マンガファンは出版社のファンじゃなくて、作家や作品のファンなんだから。
大手メーカー(出版社)のモノより、個人店(漫画家直売)のほうがイイモノが買えるとなれば、そっちに行くってば。
そして、逆らって飛び出して、作品が売れなくなるようなら、それは出版社が正しかったんだよ。
素直に誤ったほうがいい。


出版社にも言い分はあり、漫画家にも言い分はあると思う。
ボクはどっちかと言えば漫画家寄りではあるのだけど、漫画家たちがアマイとは思っている。意見を通したければ力をつけるしかないし、それには出版社に寄り掛かっていてはダメなんだよね。

クビを賭けて戦って、ダメなら独自の道を自分で作る。
そこまで考えないと、こういう論争って終わらないんじゃないかな。

ユニオン、エージェント、プロデューサーといった意見が竹熊健太郎氏のブログ「たけくまメモ」に書かれていて、ボクもほぼ同感なのだけど、まず漫画家たち自身が覚悟を持って動こうとしなければ、何をやってもダメな気がする。

こういうことは、大きくなった作家さんには、やりにくいことじゃないかなと思う。それに売れちゃってる人なら、なんとかなるデショ。モメたとしても、少なくとも生活かかってるわけじゃないんだから。
むしろ、これから個人事業主として立つべき新人たちが、自分自身のリスクマネジメントと作家性を守るために、取り組んでいく方がいいと思う。

生涯の職業として漫画家を選びたいなら、それは個人事業主として厳しい実社会と戦っていくと言うこと。
デビューできない、デビューしたけど続かないといった理由で、うまくいかなくてニートみたいになっちゃう人をボクはいっぱい見てきた。
売れている作家さんは、何千、何万という、売れなかった人たちの上に輝いているものであって、その意味では、うまくいかない可能性のほうがデカいわけです。誰もが、自分はイケると思って思って挑むんだから「オレは売れるはず」ってのは、何の根拠にもならない
いつかは「アノ星を掴む」のだとしても、それまで生き延びなきゃいけないし、その日は明日かも知れないけど、20年後かも知れないんだぜ?
個人事業主としてやっていけるだけの事業計画をちゃんと立てて、その上でチャンスをうかがうのがホントでしょう。
自分の人生という、大きな戦略で眺めれば、1つ1つの作品は「戦術」に過ぎない。戦略を持たないで、戦術だけ繰り返しても、そんなモン、いきあたりばったりじゃないか。
それでも、若いからやれるってのはあるんだけど、じゃ若くなくなったらどうするの?マンガしか知らない世間知らずの40歳なんて、マトモな仕事に就けないよ?

漫画家は素晴らしい仕事だとボクは思う。
だから、それを目指すのは素晴らしいし奨励したい。
でも、その結果として、辛く不本意なことになってしまうのは避けてほしいと思う。
若くして個人で立つというなら、それができるだけの力も身につけてほしいと思う。
そして、ボクは、それは実力というより、覚悟の問題だと思うんだよね。