●[広告漫画家のつぶやき]
06.宝くじに当たることを前提とした人生設計って、むちゃくちゃだよね
雷句誠さんのブログで明かされている原稿料。
作品自体が人気作であり、小学館漫画賞を取って、アニメにもなり、グッズも売れた雷句誠さんでカラーが1万5,000円?
ボクも元々は雑誌社で仕事をする漫画家で、当時(連載作家の一人だった)の原稿料がページ9,000円だったから、キラ星のような漫画家たちでも、その原稿料が意外な程安い、というのは多少分かるんですが、それにしてもカラーで1万5,000円とは・・・。
ということは、モノクロだったら1万ジャストか1万2,000円くらいですかね?

ま、それでも売れてしまえば、原稿料なんかどうだっていい。
漫画家が高額納税者に名を列ねたりするのは、この印税や著作権料が大きいからで、単行本が出て売れれば、原稿料なんかどうでもよくなります。
新條まゆ先生もご自身のブログで
「連載作家は正直、原稿料が高いか安いかなんて、さほど気にしません。
アシ代でなくなってしまうものなので。」
と、書かれています。
漫画家は、実際は「印税収入」で食べているわけです。

でも・・・。
原稿料はアシ代でなくなってしまうもの!?

てコトは、読み切りとか、単行本にならない作品とかは、事実上「経費だけしかもらえない」ってこと!?
印税が入らないとダメってコト!?


・・・そう、まさに、これがボクがフツーの漫画家ではヤバイと思った理由なんです。

印税で稼ぐってのは「売れたら」という「たら・れば」のハナシなんですよ。
雷句さんは「売れた」わけで、訴訟を起こそうがなんだろうが、どうにかなるんじゃないかなと思ってます。ボクが気になるのは「まだ売れてない漫画家」あるいは「漫画家予備軍」のこと。ボクがそうであったように。

漫画家を目指す人は誰だって、人気マンガを描いて売れてビッグになることを望むものです。必ずしもカネだけのためじゃないのだけど、ビンボー目指して漫画家を志すわけじゃない。やっぱり売れてほしいし、そうじゃないと生活が成り立たない。

でも、どうやったら売れるか、人気が出るかが本当に分かるのなら、誰も苦労しません。何がウケるか分からないからこそ、四苦八苦、あの手この手とチャレンジするわけですから。何年温めたネタだろうが、どれほど絵が上手かろうが、ダメなときはダメ。運も大きい。つまり、結果論にすぎないわけです。

ボクがデビューしたのは少年ジャンプの月例賞でした。応募者はその月だけで1000人以上。ボクがそうであったように、その1000人全員がデビューできる可能性を感じて応募しているはず。なのに、デビューしたのはボクを含めて3人。さらに、その後に読み切り、連載と上がっていけるのは、数カ月に1人いるかどうか。さらに、さらに、その中のホンの一握りだけが「売れっ子」になる。いや、一時的に売れっ子になったとしても、何年も、何十年も、継続的にやっていける人がどれほどいるのか。若い時のヒット作だけで人生買えるほどの大きなモノにつながるのは、本当にマレなケースですからね。
キホン的には「ギャンブル」なんですよ。
誰もが売れると信じて挑む。また、自らの力で運を呼び込んだり、売れる確率を上げたりすることは(ある程度)できる。けれど、それが全部本当に売れるわけじゃないんだから・・・。

「そりゃそうだろ?そういうモンでしょ、
だからこそ、当たればデカイんだから。」

そういう声がありますよね。

確かにその通り・・・なんだけど、そこから見えてくるのは
漫画家というのは職業の態をなしていない
ということです。

だって、原稿料は「アシ代でなくなってしまう」のだとしたら(実際そうなんですが)、一定のヒットに届かない限り、ゼロってコトですよ?
大物先生だろうが新人だろうが、連載となれば同じペースで、一定量の作品を仕上げなきゃならないのは一緒。そうするためにアシスタントが不可欠なら、そのための人件費だって一緒。でも、単行本は連載が貯まらないと出ないし、印税がすぐに振り込まれるわけでもない。そもそも人気がなければ単行本も出るかどうか。出たとしても、それまでの赤字を補填できる程の印税であるわけがない。
当たらなきゃゼロどころかマイナスの大行進。
そして売れるかどうかは、やってみなきゃ分からない。
まさにギャンブル。

・・・。

宝くじに当たることを前提とした人生設計って、むちゃくちゃだよねぇ?

(腕で確率を高められるっていう意味でいうと、パチプロとか賭けマージャンが似てるのかな?でもギャンブラーって部分は同じだよね。ほとんどの自称パチプロが大して稼げてないのも一緒だし。あ、ギャンブルって胴元が儲かる仕組みだから、出版社がデカくなっていくのも分かるな)

そういう、常識で考えたらムチャクチャな職業が、まがりなりにも成立しているのは「新人漫画家の多くが若いから」だと思います。
まだ若くて(未成年も多い)、背負っているものも少ない。全額ツッコんで宝くじを買える年齢だから、チャレンジ出来ているようなものでしょう。そして、その中から「当たって人生デラックス!」になる人が出てくる。
若くない人もいるにはいるけれど、全体として「漫画家予備軍=若者」だから、同じやり方で付き合わざるを得ないと言うところでしょう。

でもねぇ、ボクは「職業」として漫画家をやりたかったわけで、ギャンブラーになりたいわけじゃないんです。だから「ギャンブルではない漫画家の在り方」を模索してきて、その結果として、今の状態にあるわけです。

ボクは今は、広告というビジネスの中でマンガを描いているわけですが、それは「生涯の職業として成立する漫画家」を考えた上での選択です。
もちろん、ソレも結果論であって、最初から「そういう状態」を目指していたわけではありません。流され、もがき、気がついたら、そういう場所にいた。
そして、ソコからしか見えないことがあるように思えます。

そこで、次回ボクが今の状態に至る流れを思い返しながら、少し辿ってみたいと思います。