●[ごじゃっぺと〜さん]
15.ダレを採る?

一部の麻雀マンガは好きだ。Vシネマの「雀鬼」とかも面白かった。
自分自身も麻雀は好きだけど、ものすごく弱い。点数も、あんまりよく分からない。
ただ、ゲームとして好きなんだよね。

さてと。採用のハナシだな。
この4コマは求人情報誌に連載していたから、こういう話が出てくるんだけど、実際、ボクが人を選ぶ時は、キャリアとか能力とかより、覚悟があるかどうか、つまり「ドタンバで逃げないか」を気にする。
キャリアなんてのは、これから積めばいいし、ボクも積んできたわけで、他人のキャリアを当てにして商売しようとは思ってない。能力も、それまでがどうであろうと、ウチにはウチのやり方があるし、それはこれから身につけるものであって、最低限の基礎力だけで十分だ。そんなモンより、嫌なこと、面倒なこと、厄介なことが山ほどあるのが仕事ってヤツで、担当じゃないからヤダとか言い出すようなヤツじゃ、到底雇えないんだよね。

デザイナーさんなどは、己のデザイン力とか感性とか、そういうモノを売りだと思ってる。それは間違いではないけれど、正解とも言えないとボクは思う。
だって、お客は素人なんだぜ?オレはあいつより上手いって言っても、ソイツだってそこそこ上手いんだよ。そして、その違いは、プロどうしなら歴然でも、素人目では分からない。500階のビルと501階のビルは、下から見上げれば同じなんだ。
だから能力は常に磨いてなければならないけれど、ソレが仕事を確保する決定力にはならない。

それにボクらのやってる仕事は、モノづくりだ。受注の段階では作品は存在しない。過去の事例があるだけで、お客が代価を払うそのものはないんだ。でも、契約成立の段階でカネを支払うことは確定している。となると、お客はモノに払っているんじゃなくて「期待するモノができる可能性」に代価を払っている事になる。つまり、ヒトを買っているんだ。デザインじゃなくてヒトをね。

ボクの知り合いで、全然仕事の話をしないセールスマンがいる。ときどき訪ねてきては、高校野球の試合がど〜だとか、どこそこでゴルフしてきたとか、そういうことしか言わない。こっちが「で、今日は何の用で来たの?」って水を向けてやっと「あ、そうそう」と仕事の話をはじめる。水を向けないと「さて、それじゃ」って、そのまま帰っちゃう。
でも、この人、営業成績いいんですよ。お客といつの間にか友達になっちゃって、結果としてモノも売れちゃう。
考えてみると、仲のよい友達が自分の求める商品を扱っていて、それが値段も手頃でサービスも悪くないのだったら、そいつから買いたいと思うモンだよね。人は人を買うんだ。

だからボクは、デザイナーとか漫画家とか、職人としてのこだわりも持った上で、腕じゃなくて人を買ってもらえるようになろうとしてきた。スタッフにも、同じように指導していくから、ソレを受け入れてやってみようという人でないと、困るんだ。

(最近は「USP=ユニーク・セリング・プロポジション」、つまり自社だけの価値を見つけだそう、作り出そうという考え方がある。オンリーワンってやつだよね。コレを突き詰めていくと、自分って言うパーソナルこそがオンリーワンなんだよね。それはデザイナーを雇うんじゃなくて、オレを雇うってこと。ボクは漫画家だから、ファンを持とうと思うわけで、お客ってのはファンだと考える。それはマンガならなんでもいいんじゃなくて、ボクのマンガじゃないとダメってことじゃないとマズイんだ。お客にそう思ってもらえるようにボクはやってる)
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