素敵な男のドラマを書いてしまったが、関係者全員がいつも無欲であり続けた、というものではない。一部の関係者には、ときには初心を忘れて、ゼニカネを求めてしまうといったこともあった。
グッズの売り子を手伝っているときも「パンフなんか無料でいいんじゃないかな?」「ポスターやポストカードはもっと安くなきゃ」と思いながらやっていた。ジムで決めたことだから仕方ないけど、せっかく来てくれたお客さんに申し訳なく思っていた。そもそも無名の頃はパンフも無料で配っていたし、ボクも無料配布を前提に作っていたんだよね。それが有名になったら有料ってのは、ちょっと抵抗があったんだ。今こそ感謝の気持ちを込めて無料にすべきじゃないかなって。
もしくはお金を取れるレベルの内容に仕上げるかだな。ボクは作家のはしくれだから、カネを取れるクオリティじゃないものを売るのには抵抗があるんだ。で、売るなら、もっと充実したものにしようって何度も提案していた。でも企画段階では乗り気になってくれるんだけど、結局は他のドタバタに終止してしまい、時間がなくなって無料レベルのモノになっちゃう。で、それを有料にしようとするから、毎回、少しでも値段を抑えるように説得する。その繰り返しだった。
そういうわけでパンフやグッズを買ってくれた皆さん、どうか許してやってくださいね。
ただ、ボクはそういうことに批判的ではあるけど、声高に批難もしていない。本当に苦しい状態だったのは知ってるから、少しでも資金が欲しい気持ちも分かるんだよ。だから強く言えなかったの。本当の志はあるんだけど、それでもつい、お金を欲しがっちゃうことがあるのは、社会で生きている人間なら当たり前のことだもんな。ボクだって、欲しくないわけじゃないんだから。欲しいけど、そこをグッとやせ我慢してるわけでさ。
それに、ドタンバでは必ずカネより志を選ぶ人たちばかりだったのは間違いない。そうじゃないヤツが付き合えるようなレベルじゃないからね。
何があろうと、最後の最後のところでは信じられる。そういう連中だったからこそ、ボクも踏ん張れた。内藤に関わった数年間は、素晴らしい思い出なんだよ。有名人に関わったんじゃなくて、無名の素晴らしい人たちと出会えた事が素晴らしいんだ。
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