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イバライガー・トライクを仕上げて数日後。マンガのほうのシナリオ案は、全然進んでいなかった。イバライガーとコラボする前に考えていたプロットはあるのだが、どうやったらイバライガーバージョンになるのかで迷っていたからだ。
元々、考えていた「地域向け防犯コミック」は、以下のようなものだ。
夜道で知らない大人につかまりそうになった少女。学校でクラスメートに話すと、みんな似たような体験を持っていた。子供たちには大人への不信感が芽生え、彼等は独自に街のハザードマップを作りはじめる。しかし、マップ作りの過程で彼等はお店のおじさん、公園のおばあちゃんなど、大人たちと交流を持ち、大人へのわだかまりが薄らいでいく。怖い人もいる。でも、ほとんどの大人は怖くない。怖いのは、知らないことだ。街で暮らす人々を知っていることが、一番大事なことなのかも。地域のお祭りや運動会、廃品回収には「お互いを知る」という意味もあるんだな。子供たちの行動に、大人も気付かされていき、地域の交流も増えていく・・・ |
ボクは、よく見かける「子供110番」といったポスターに疑問を持っていた。だって、どの家でも、どのお店でもいいじゃないか。ポスターで宣言しなくても、全ての家が「子供110番」のはずではないのか?そもそも危ないことがあったら、身近な家に飛び込めばいいんじゃないの?防犯とは地域の問題じゃないのか?
それに、ボクは大人のダブルスタンダードが嫌いだった。子供には横断歩道を渡れと言うくせに、自分は信号のない道を渡ったりしている。PTAでは朝の「旗持ち」を交代でするが「挨拶をしない子がいて不愉快だからやりたくない」という人がいたりもした。そういうアンタは、駅の改札を通るときに駅員に挨拶してんのか?
運動会では子供たちは手足を揃えて行進し、並んで待っているときも、あまり喋らずに、ちゃんと順番を待っている。なのにPTAが参加する競技では、大人たちはペチャクチャ。行進もバラバラ。教師の演技ですら、子供の手本にはとてもならないレベルだった。運動能力じゃなくてマナー面で。卒業生と思われる明らかに未成年の子がたばこを吸っているのに、注意もせずに笑っている教師すら見かけた。
テメェらなぁ!そのザマで「キチンとしなさい」とか、どのクチが言うんだ?
いや、ボクもキチンとできるわけじゃない。どっちかと言うと「いい子」じゃなかったと思うし、子供の頃にできたことでも、大人になると忘れてしまっていることは多い。だけど自分ができないことを子供には強制するっていうのは、どう考えてもおかしい。少なくとも子供の前では、みっともない真似は慎むべきだろう。
(もっとも、自分はできてんのかと問われれば、ダメダメな部分も多いんだよな。ただ、気にもしない、恥ずかしいと感じてないってのはダメすぎると思う。授業参観でずっとヒソヒソ話してるオバサンたちがいたりするんだけど、場所をわきまえろよ、と。せめて子供が見てるとこではやるな、と)
子育てしていると、よく分かる。キチンとしているのは子供のほうだ。大人にはできないことを、毎日ちゃんとこなしている。ボクは、お手本になるような大人にはどうしたってなれそうもないけれど、せめて自分を棚上げしないようにはしたい。そうじゃないと、本当に大事なところで、わが子がボクを信じてくれなくなると思う。
だって、ボクは子供の頃、そう思っていたもの。大人は勝手だ。子供の気持ちなんか考えもしない、と。
もう1つ、ボクが引っ掛かったのは、某有名アニメ(マンガ)のキャラクターを使った「子供向けの防犯マニュアル」を見たときだった。その本では3択(4択だったかも)クイズの形式で、対処方法を教えていた。
知らない人が運転するクルマが寄ってきて、道を尋ねてきたら、どうする?という設問があり、選択肢は「1:すぐに教える」「2:周りに人が多い場所なら教える」「3:知らない人には絶対近付かない」といったもので、正解は「3:近付かない」だそうだ。
ええっ、そうじゃないだろ?確かにそれが一番安全かもしれないけれど、普通は「2」じゃないか?人を見たら悪人と思えっていう指導はおかしいだろう。確かに危険な大人もいるけれど、世の中のほとんどの大人は危なくない。安全のためとはいえ、子供たちから常識的なコミュニケーション力まで奪ってしまうなんて理解できない。そんな教育で、どんな大人ができるのやら。
こうしたことがずっと気になっていて、それでボクはボクなりの考え方をマンガにしようと思ったのだった。ボクは地域の人々とまちづくり活動に関わっていて、その方面でも地域サービスとか何かの設備を作るとかばかりで「地域の心」を作る部分が全然考えられていないように感じていたから、防犯というテーマに地域づくりを重ね合わせてシナリオ案を考えていたのだった。
そういうときにイバライガーと出会ったわけだ。元々のシナリオにイバライガーをカメオ出演、なんてのじゃ納得できない。ちゃんとしたヒーロー物に仕上げたい。それで悩んでいた。
が、その日、シナリオ案が稲妻のように閃いた。
本当に、突然だった。いつものように遅めの昼食を取って、ボンヤリと歩いているときだ。突然、ストーリーが浮かんできた。物語は、あっという間に情景となっていく。アングルも、光学処理も、登場人物のセリフも、全部、一瞬で浮かんできた。そしてボクは・・・・泣いてしまった。大のオトコが、自宅の近所の道ばたで。
慌てて事務所に戻った。
泣いているのがみっともないからではなくて、今思い付いた物語を、一刻も早くシナリオとして書いておきたかったからだ。焦っていた。こういうイメージは、すぐに霞んでしまうものだからだ。
だけど・・・。
消えない。むしろ、時が経つごとにイメージはどんどんクッキリしていく。
以下、そのプロットを記載しよう。
あ、あまり期待しすぎないでね?一応「地域の防犯啓蒙」のための企画だし、完全に出来上がったわけじゃないし、単なる初稿だし、読みきりだし、画力はともかくページ数は現実に執筆可能なボリュームに抑えなきゃなんないし・・・。
ただ、ボクがど〜ゆ〜意図を持っていたかは、シナリオ案を見せたほうが早いから、ここに出しちゃおうと思ったわけで・・・。
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