個人情報や固有名詞はできるだけ伏せていますが、やりとりしたメール文面などは原文のママです。


■番外編:ビビるなナメるな、放射線! 2011.03
福島の原発事故で、放射能漏れの不安が広がっている。確かにコワイ話だ。放射能を甘くみてはいけない。だけど、何でもかんでもビビっているのもどうかと思う。また、憶測やデマも広がっている。ボクが受信しているクリエイターたちのメーリングリストには「雨に高濃度の放射能を含んでいる可能性がある」「放射能対策には昆布を食べるのが良い」といった警告があった。似たような情報はネット上でも山程見つかるし、放射能を防ぐために花粉症のマスクが品切れになってきてるとの話も聞く。さらにトラックドライバーなどが放射能を恐れて被災地への物資が届きにくくなっているとの話まで・・・。

こ、こりゃシャレにならん!
今までは、カンチガイする人がいても仕方ないと思っていたんだけど、ほっとけない。東北では今も苦しんでる人がいるのだ!。

皆さん!!大丈夫ですよっ!!
今の段階で「高濃度の放射能」なんか雨に含まれません!
昆布食べても放射能対策にはなりません!
マスクは間違ってないけど、まだそんな対策が必要な段階じゃないです!


不安だから、こういうことが広まってしまうんだろう。
対策のためにも、精神的な健康のためにも、正しい知識を持ったほうがいい。
ボクは高エネルギー加速器研究機構(KEK)で、科学マンガ「カソクキッズ」を3年連載以上していて、その中には放射能について解説したエピソードもある。ボク自身は専門家ではないけど、カソクキッズは最先端物理学のプロであるKEKの博士たちがきっちり監修してくれている「世界一科学的に正しいギャグマンガ(当社比)」だ。それにボクだって、3年以上もスゴい博士とおつき合いしているから、ちょっとは詳しくなってる。
というわけで、この連載を通じて知ったことを、みんなにも伝えておこう。

<2011年3月25日改定>
ちょこちょこと加筆したり構成を見直したりしました。また、このコラムを読んでくれたKEKの博士からの指摘で一部表現を改定しました。以前の文章では「放射線は光の一種」と表記していましたが、光には含まれない放射線も数多くあるわけで、正しくは「光も放射線の一種」です。大変失礼しました。
なお、このコラムは私「うるの拓也」が個人的に書いているものであり、KEK等から助言やご意見をいただいてはいますが、直接の監修を受けているわけではありません。文責その他の一切は「うるの」にあります。

素粒子や放射線(放射光)について解説しているマンガ「カソクキッズ」は、高エネルギー加速器研究機構(KEK)のホームページで連載されています。震災直後は電力事情が悪くWEBサーバが停止していましたが、現在は復旧しています。


■漏れるのは放射能じゃないよ?
まず最初に「放射能」と「放射性物質」と「放射線」の違いを説明しておこう。ちょっとしたコトバの言い回しなんか、ど〜でもいいよ、とは思わないでくれ。この3つは全然違うモノを指している。それなのに全部を「放射能」と引っ括めてしまうから、正しい認識がしにくくなってるんだ。状況を理解するためにも、正しい理解をしておこう。

一般に放射能漏れなどと言うけど、このコトバには語弊がある。
放射能ってのは「放射線を出す能力」のことで、漏れるのは、その能力を持つ「放射性物質」か、その放射性物質から出た「放射線」なのだ。
例えて言うなら「弾丸を発射する能力(放射能)」を持つ「拳銃(放射性物質)」から「弾丸(放射線)」が出る、という感じだね。ニュースなどでは、この3つを区別せずに全部を「放射能」と言ってるんだけど、こうして整理し直すと、それぞれニュアンスが違う事が分かるでしょ。
まず、この3つの違いを理解しよう。そうすれば「ああ、このキャスターが放射能と言ってるのは放射線のことだな」とか「この解説者は放射性物質について話してるんだな」といった具合に分かるし、分かれば状況を把握しやすくなるからね。

※カソクキッズ11話5ページより ※混同しちゃイケナイよぉ!


■放射線は光の一種。自然にもたくさんある。
人体に直接影響を及ぼすのは、放射性物質から出る「放射線」だ。放射線にはエックス線、アルファ線、ガンマ線、中性子線など、色々ある。そういうのを全部含めて「放射線」と呼んでいるわけだけど、放射線なら何でもかんでもコワイわけじゃない。問題は量なのだ。津波は恐ろしいけれど、シャワーの水は怖くないでしょ?

そもそも放射線は、普段の大気中にもある。というか光も放射線の一種なのである。ボクらが見てるあらゆる光の正体は「電磁波」で「人間に見える光=可視光線」は電磁波の波の中の一部だけ。光=電磁波の波には、波長の長い部分と短い部分があって、ボクらには真ん中の可視光線しか見えない。でも見えないだけで、いつだって色んな波長の光を浴びているんだ。
その中で波長が長いものが赤外線やマイクロ波や電波。そして波長の短いものが紫外線やエックス線やガンマ線といった「放射線」なのだ。

ただし紫外線はふつう放射線に含まない。またヘリウム原子核(アルファ線)、電子線(ベータ線)、中性子線、ミュー粒子(宇宙線の一部)などの放射線は光ではない。

とにかく「放射線=可視光線よりも波長の短い光」なんだから、もともと自然にいっぱいあるものなのだ。いつも浴びてるんだから、やたらと怖がるよ〜なモンじゃないんだよ(アマくみてもいかんけどね)。

※カソクキッズ11話2ページより


■ボクらはいつでも放射線を浴びている。
※カソクキッズ11話6ページより
放射線量の単位はシーベルト(以下Sv)。
1ミリSvは1Svの1千分の1で、1マイクロSvはさらにその1千分の1(1Svの100万分の1)。
放射線を浴びることを「被ばく」という。ガンマ線やエックス線は「光の一種」だから自然にあるもので、ボクらは日々、ホンのわずかづつ被ばくし続けている。平均すると世界中の誰でも年間約2.4ミリSv(2,400マイクロSv=地域や日照量により異なる)を被ばくする。高空になると放射線量も増えるので、昼間に飛行機に乗ると被ばく量も増える。
でも、その程度は何の問題もない。実際、全ての人はいっつも浴びてるんだし、何ともないでしょ?そして人体は、自然放射線量の何倍もの放射線でも障害は出ないのである。例えばエックス線撮影(レントゲン撮影)やCTスキャンでは、一気に4〜最大7ミリSv(4,000〜7,000マイクロSv)くらいのエックス線を浴びる。それだけの放射線を一度に浴びても問題になってないのだ。
ただし多量の放射線を何度も浴びるのは危険だから、病院の検査でも注意をしている。放射線を扱う医師や技師は、法令で年間20ミリSv(20,000マイクロSv)を超えないように規定されている。特に妊婦や胎児には障害が出やすいので、強い放射線を使った検査は行わないし、妊娠している人は放射線を扱う仕事を減らしたりする。
ただ、妊娠中はともかく、妊娠可能な女性というだけなら3ヶ月で5ミリSv(5,000マイクロSv)程度までは許容範囲とされている。また緊急時には一回だけなら100ミリSvまで認められている。


■今、どれくらい放射線が出てるの?
※カソクキッズ11話9ページより
そういうわけで、ちょっとくらいなら、そんなに神経質になる必要はない放射線だが、原発事故ではちょっとでは済まない量の放射線が出てしまう危険がある。みんなが恐れているのは、この「多量の放射線」だ。
お刺身を醤油につけて食べるのは問題なくても、醤油をガブ飲みしたら死んでしまう。ボクが好きなコーヒーだって、一定量以上摂取したら死んでしまう。何ごとも「ほどほど」じゃないとマズイわけで、放射線も多量に浴びては危険なわけだ。
身近にある放射線(の仲間)の代表格は、日焼けの原因になる紫外線。UV対策なんていうくらいで、紫外線を多量に浴びるのはよくない。
次に身近なのはレントゲン検査で使うエックス線。これも浴び過ぎると人体に障害が出る。

事故が起こっている福島第1原発3号機建物周辺で心配されているのはガンマ線。光の一種の放射線だから自然にもあるものだ。
だが、現場周辺では1時間当たり400ミリSvが観測されたという。これは自然の放射線量とは比べ物にならない大変な数値だ。数十分で放射線障害が出る危険がある。10時間もブラついたら死亡するかもしれない。
250ミリSvを超えると白血球に異常が出る可能性がある。1,000ミリSv(=1Sv)を超えると吐き気や悪寒といった放射線障害が出る。2,000ミリSv(2Sv)になると死亡する人も出始め、4,000ミリSv以上では大勢が死んでしまう。8,000ミリSvなら、まず助からない。
また放射線は、まとめて浴びても、少しづつ浴びても同じ。一回に100ミリSv浴びても、1ミリSvを100回浴びても、受ける影響は同じなのだ。だから少量でも浴び続ければ危険値になってしまう。400ミリSvもの放射線がある場所にいられるのは、合計時間でも数分だけだろう。それ以上は障害を覚悟しなければならない。
そういうわけで事故現場至近の人は、放射線対策が必須だ。だからこそ、半径20キロもの人が避難しているわけだよね。

だけど、その他の地域ではどうか。
茨城県北茨城市では17日に1.18マイクロSv、東京都内では0.089マイクロSvが測定されたそうだ。これまた自然の状態よりも多いのは間違いない。漏れているのは確実だろう。
でも医師や放射線技師は、年間20,000マイクロSvまで許容範囲とされているんだから、毎日50マイクロSvくらいを浴びても問題はないはずなのだ。1.18とか0.089マイクロSv程度の上昇は、全然心配いらない許容値だ。
それに軽度の放射線障害が起こるとしても25万マイクロSv(=250ミリSv)くらいから。測定値は25万分の1でしかない。事故で放射線量は確かに増えているけど、人体はその何十倍もの放射線でも大丈夫なのだ。慎重にニュースをチェックすべきだとは思うけど、まだ逃げたり隠れたりはしなくていいのだ。
(ただし医師や技師が長期的に年20,000マイクロSvを浴び続けると、何らかの影響が出る可能性もあるかもしれない。だから、あまり増えないほうがいいのは間違いないんだよね)


■放射線を出す物質=放射性物質。
さて、次に「放射線を出す物質=放射性物質」について説明しよう。
今回は放射線だけじゃなく、この放射性物質も漏れてしまったようで、日本の原発事故で過去最悪なのは確実だ。放射性物質はずっと放射線を出し続けるので、例え微量でも、これがあるとドンドン放射線量が増え続けてしまうのだ。

今回ニュースで何度も出てくる放射性物質は「セシウム」。
原子番号は「55」で、当たり前の基本元素の1つだ(元素記号はCs)。

「原子」と「元素」は、ぶっちゃけ同じものを「構造」と「性質」で言い分けているようなモノ。万物は、この元素でできている。
ちょっと理科の勉強になっちゃうけど、世の中にある物質は、みんな「原子」からできている。そして原子は「電子」と「原子核」でできていて、その原子核は「陽子と中性子」の集まりだ。さらに言うと陽子と中性子は、それぞれ「素粒子(クォーク)」が3個が結合したものだ。だから正しくは「万物はクォークでできている」んだ。ボクは、この素粒子の世界をずっとマンガで描いてきたんだけど、まぁ、今はそれはいいや(いつか読んでね)。

今までに知られている元素は約118種類あって、それぞれ原子番号がある。セシウムはその55番目。ちなみに原子の違いは「原子核の中の陽子の数の違い」だけで、その陽子の数に合わせて番号をつけたのが原子番号。セシウムは55個の陽子があるってことだ。
ただし、今回のセシウムは原発で人工的に作ったものだから純製品じゃなくて「セシウム137」だろう。
こういう物質は「放射性同位体」と呼ばれている。

同位体っていうのは、原子核の陽子の数は同じでも、中性子の数が違う(質量が違う)ものを言う。例えば、原子番号1の軽水素原子、重水素原子、三重水素原子は、どれも水素なんだけど、中性子の数が違う同位体。
で、この同位体ってのは普通の状態とは「中性子数が違う=質量が違う=エネルギー量が違う」から、安定(存在)しにくい。全部じゃないけど、不安定なモノが多いんだ。で、そういう物質はエネルギーを放出して安定しようとする。この放出されるエネルギーが「放射線」。今回問題になっている「放射性同位体=放射性物質」とは、そういうモノのことだ。


■放射線の「被ばく」ってナニ?
人体に影響を及ぼすのは放射線だけど、その放射線は放射性物質から出る。「放射性物質=セシウム」はガンマ線を放射する。ガンマ線は人体に有害な放射線の1つで、約10センチの厚さの鉛でやっと遮断できるほど透過力が強い。そんなモンが漏れたから大騒ぎになっているわけで、一定量を超える放射線を浴びてしまうことを「被ばく」という。

※カソクキッズ11話7ページより

放射線の被ばくには、大きく分けて2種類ある。
直接放射線を浴びる被ばくと、体内に取り込んでしまった放射性物質から被ばくする「体内被ばく」だ。
セシウムは花粉よりも小さい微粒子だから、花粉みたいに服とか肌とか髪の毛にくっつく。そして鼻や口、あるいは傷口などから体内に入る。体内に入ると、そこでずっとガンマ線を放射し続けることになる。体外に排出されるまでは100〜200日もかかるし、セシウム137の半減期(放射線を出さない状態になるまでの期間)は、30年以上。大量に取り込んでしまったりすると大変だ。

でも「大量に取り込んでしまった」ならば、だよ?
何度も言うけど量の問題だから。微量のセシウムは微量の放射線しか出さない。微量から大量が出たら質量保存則に反してしまう。そんなことはあり得ないのだ。
事故現場にずっといたら「被ばく」と診断すべきレベルの放射性物質を取り込んでしまう危険もあるけれど、今のところ離れた場所なら、人体に影響するほどの放射性物質を取り込むことは、まずない。
(ただし風向きや事故の状況にもよるから、事故現場に近付くのは避けるべきだ)


■放射線対策って、どうすりゃいいの?
では、もしも今後、放射性物質がシャレにならない量で大気中に漏れるようなことが起こったときには、どうすればいいか。
(何度も言うけど量の問題だからね?ちょっと増えた程度でパニックしちゃダメだよ)

昆布を食べても効果はない。昆布にはヨウ素が含まれていて、ヨウ素には確かに放射性物質と結びついて弱める働きがある。でも、それはちゃんとした「安定ヨウ素剤」などの薬の場合で、昆布じゃほとんど意味はない。塗り薬(ヨードチンキ)などにもヨウ素が含まれているものがあるけど、それも微量すぎて効果はない。
だいたい塗り薬を飲んだりしたら、それはそれで障害が起きちゃうよ!下手すりゃ死ぬ。
アホなことは絶対にすんなよ?


放射線対策とは、その源である放射性物質を体内に取り込まないようにする事だ。
放射性物質は微粒子で、花粉に似ている。だから対策も花粉対策と似ている。マスクをする。肌をさらさない。帽子をかぶる。家に入るときには服をはらって粒子を持ち込まないように気をつける。手洗いする。外気に触れた飲食物も、よく洗ってから食べる。これがボクらにできる一番の対策だ。

ちなみにガンマ線の遮蔽には鉛なら厚さ8〜10センチ、コンクリートなら30〜50センチくらいが必要だから厄介だけど、アルファ線は、わずか紙1枚で遮蔽できる。
また放射線は距離の二乗に反比例して減少するし、大気の壁もかなりの放射線を防ぐ。なんせ宇宙から降り注ぐ「原発よりも遥かに強力な放射線」から地球を守っているんだから。放射線が大気中を数キロ進む間に、量は何百分の1にも下がってしまう。まぁ何分の1を何回やってもゼロにはならないわけだけど、実際、現場周辺ではバリバリ危険量の400,000マイクロSvだったのが、数十キロ離れた北茨城市では何の心配もない1.18マイクロSvに下がってる。約34万分の1だ。東京なら約450万分の1。
ボクらは分厚い大気の壁に守られているんだ。全然心配いらないよ。

※カソクキッズ11話10ページより

地球を放射線から守ってくれる強力なバリア=大気。そういう意味では環境問題はとても大切だ。環境破壊が進んでオゾンホールなどが増えてしまうと、宇宙からの放射線を防げなくなってしまう。原発一つでも大騒ぎなのに、自然光までアブナイなんてことになったら、ボクらは生きていけない。実際、北極圏などではオゾンホールが増え続けている。温暖化だけじゃ済まない問題なのだ。
2011年3月現在、関東各都県(茨城を除く)では「計画停電」が続いている。またガソリン不足で交通にも不便だ。だけど節電も排ガスを減らすのも環境対策の1つだし、それは地球を放射線から守ることにもつながっている。健康に暮らせる地球であり続けるためには環境対策は必須。これを機会にボクもみんなも考えなきゃ。(そういやイバライガーって、それがテーマだったんだよな)


■今よりアブナイことは起こらない?
もしも原発が爆発したら?大量の放射性物質がバラまかれてしまうんじゃないの?と心配する人もいる。
確かにそれが最悪の事態だ。実際「炉心溶融(メルトダウン)」がすでに起きているとも言われている。水素爆発が起きた際のショッキングな映像も世界中に流れた。アレを見れば、今後「さらに致命的な爆発」が起こることを心配するのは当然だろう。距離があれば平気だとは言っても、爆発飛散して大量の放射性物質そのものが飛んできたら・・・。

だけどボクは、そんなコトは起こらないと思っている。アレは原発であって原爆じゃないんだ。イメージが似ているから原発と原爆を混同してる人が多いみたいだけど、原発は建物で原爆は爆弾。どっちも原子力を使ってるけど、この2つは全く違う。燃料棒は爆弾じゃないから、高熱によって炉心が溶けたりすることはあっても爆発することはない。爆発するのは周囲の建屋などで、燃料棒そのものじゃないんだよ。
今後も水蒸気爆発などが起こる可能性はあるだろう。でもそれは「核爆発」じゃないし富士山大噴火とかでもない。燃料棒が全部粉々のチリになって飛散するなんてことは、ちょっと考えられない。てことは「大量」の放射性物質が遠くまで飛ぶはずがないんだ。微量は飛ぶだろうけど、微量なら何十年も浴び続けないかぎり、人体に影響は出ないはずだ。
それに爆発はもう起きたよねぇ。それ自体「最悪」ではあるんだけど、そこまで悪化して現在の放射線量なんでしょ。なら、近郊はともかく避難勧告が出ているエリアより外側なら大丈夫だと思うな(いつエリア内に戻れるかは全く分からないし、例え微量でも長期間放置したりしてはマズイと思うけど)。

なお、今後については慎重に経緯を見守りつつ、長期的な観点で対策を考えていかなきゃならない部分もあるだろう。特に乳幼児や成長期の子供たちを不必要な被ばくから守るためには、場合によっては何らかの対策が必要になることもあり得る。
ただ、日本の安全基準は神経質すぎるくらいに高い(悪い事ではない)ので、水道水の放射線濃度が基準値を超えたからって、スグに危険ってことじゃない。あくまでも「ず〜〜〜っと飲み続けると乳幼児によくないかも」という程度なのだ。
全然気にしなくていいというわけではないが、長期的に飲み続けない限りは心配ない。
まして大人だったら、ガバガバ飲んで大丈夫。
パニくって買い占めたり逃げ出したりするとバカを見るぞ。


■デマや誤った知識に惑わされないで!
※カソクキッズ11話11ページより
そういうわけで、今の段階では微量の漏れで済んでいるから、過剰な対策はいらないと思う。
無闇に怖がってちゃ、放射線よりも障害が大きくなっちゃうしね。
楽観論すぎると言う人もいるかもしれないけれど、ボクには今の段階で逃げ出す必要があるとは思えない。
デマに振り回されたりパニックを助長したりするほうが、ボクにはずっと恐ろしい。
まぁ、どうしても不安だっていうなら、精神的安定のためにマスクしてもいいけど、実際にはマスクが必要なレベルじゃないのは間違いない。
報道は気休めみたいに聞こえるかもしれないけど、専門知識がない人のために大ざっぱに言ってるだけで、基本的には間違ってないと思うよ(説明が下手な先生もいるし、それに乗じて過剰に危機感を煽るようなキャスターも見受けられたけどね)。

被災地の人へのインタビューとかでも「とりあえず大丈夫です」って言ってるのに、何か問題があるはずだって尋問みたいに聞いているキャスターもけっこう多かった。そりゃ何も問題がないわけがないし、困ってるのは間違いないから支援や援助も必要なんだけど、何とかして危険で緊急でショッキングなコメントを引き出そうとするのは、ちょっとオカしいよなぁ。頑張って立ち直ろうとしてる人に「オマエらは危ない状態だ」ってレッテルを押し付けてるみたい。支えるから、大丈夫だからって言ってあげるほうがいいと思うんだけどな。

とにかく、今はデマや誤った知識に惑わされず、冷静に毎日を頑張ろうじゃないか。
現地では、これ以上にならないように必死の作業が続いている。
ナメちゃいかん。でもビビってもいかん。
ボクも専門家じゃないけれど、放射能、放射性物質、放射線について、より正しい知識を身につけて、しっかりと見守っていきたいと思う。




■注・追記

カソクキッズは、茨城在住のボク(うるの拓也:原作・構成・演出)と作画担当(宮城県石巻市出身)、仕上げ担当(宮城県仙台出身)という被災地チームで描いています。特に石巻市は大きな被害を受けましたが、家族全員無事だったとのこと。
今、ボクらは最新の「27話」を描いています。電力不足でKEKのWEBサーバが停止しているから描いても公開できるかどうか分かりませんが、それでも元気にやってるんだと示すためにも、必ず月末までに完成させるつもりで、みんな必死に取り組んでいます。
災害なんかで夢は終わらせない!絶対に負けない!諦めない!
ボクはとことん戦います!

(3月18日追記:なんとかサーバが復旧できそうだと連絡がありました!)
(3月24日追記:今はサーバが復旧して閲覧できています!)


イバライガーも、地震に負けずに飛び回っていますよ。地震翌日からつくば市近郊でイバティッシュの無償配布を開始。またイバライガー基地は井戸水なので、断水した人に分けてあげたりもしています。3月16日は水戸地区へ、17日は津波被害を受けた那珂市の孤児院に、イバティッシュ・うまい棒・ジュースを届けたそうです。

> 基地は井戸水ですのでトイレも使えます。
> 自宅から〜基地辺りは断水らしいですのでイバティッシュなどを配りに行きます。
> コンビニでもティッシュ売り切れらしいので僕の出来る活動をして来ます。
(2011/3月12日23時21分)

やっぱ、イバライガーはヒーローだよなぁ。ネットで応援メッセージとかだけじゃなくて、身体張って動いてるんだもんな。友だちになれて誇らしいな。

> 本日は・・・放射能気にせず・・ひたちなかまで行きました。

ほんとに気にしないでいいんだよ。安心して出動しろ!

> ガソリンも朝から並び、帰ってこれる範囲しか行けない。
> しかも資金は底をついて・・それでもガソリンを優先して動いてます。
> 明日は海沿いまで行こうと思います。

(2011/3月16日23時24分)

う〜ん、エライぞ、イバライガー。ボクが13日に訪ねたときも、たまたま水を汲みに来た親子のために、ちゃんとイバライガーRが出迎えて、トレカをプレゼントしてお子さんを元気づけていた。こういうときに「誰か」のために行動できる人を、ボクは心から尊敬する。
(他にもボクの知人で、支援物資を持って14日から釜石に入った人がいる。秋田・大曲仙北の老舗菓子司「つじや」の辻さん。秋田だって大変だろうに、やっぱアツい男だなぁ!オレも負けられね〜ぜ!)


ボクは本質的には原発反対派だ。今回「今くらいじゃ危なくないよ」と書いたけれど、やはり危険であることには違いない。放射性物質には、半減期が何千年、何万年といったものもある。電気は便利だけど、未来すら失いかねないギャンブルには賛成できない。
ただし、だからといって「今すぐ原発を全部止めろ」とも言わない。そんなことをしたら日本中が大混乱になるだろう。今回だって計画停電をやってるわけだし、今の状態で全ての原発を止めてしまったら、パニックや暴動による被害がバカにならない。
実は、ボクは原発関係のホームページをいくつも手掛けている。引き受ける際には、自分は反対派ですと宣言し、原発関係者の皆さんにも理解を求めた。
「皆さんは原発を運営しているけれど、それは、いつか安全なクリーンエネルギーが生まれて、原発を使わないで済むようになるまでのこと。その日が来ることを心から願いつつ、今は原発を支えていく。そういう考えであってほしい」
この意見を、先方の担当者たちは受け入れてくれた。誰だって平和と安全を求めているんだ。

ボクらは原子力という、強力すぎて持て余しかねないエネルギーとともに生きている。今回のような事故も、これが最後とは言えないだろう。だからこそ我々は正しい知識を持ち、世界と未来について考えるべきだ。


今回ボクは、水もガスも電気もない夜を過ごした。
トイレが使えないので立ちション(仕方ないだろ!)しに外に出たら、ものすごく奇麗な星空。10年近く前、灯りが全くない深夜の霞ヶ浦湖畔(美浦村近郊)で見た星空だ。一瞬、災害を忘れた。ボクの家の上には、こんな夜空があったのか。
節電、節水が与えてくれるものは、エネルギーだけじゃないらしい。



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